フィルムからデジタルへ、写真や映像を取り巻く環境は大きく変わりました
以前、あるお客様が30枚ほどのガラス乾板をお持ちになり、ご来店くださいました。
「これを、なんとか見ることはできないでしょうか」
手札ほどの大きさのガラス乾板が、重ねて箱に入ったまま、長い間眠っていたそうです。
ガラス乾板は、フィルムが普及する以前に使われていた写真の原板です。
私自身、当時の撮影に携わった経験はありませんが、当店にも古いガラス乾板が数多く残されています。
お客様は最初に、近隣の写真店やカメラ店へ相談されたそうです。
しかし、古い形式の原板であることや、取り扱い方法が分からないことから、対応は難しいと言われたとのことでした。
古い写真や映像の記録媒体には、今では一般的に使われなくなったものが数多くあります。
そのため、貴重な記録が残されていても、見る方法が分からないまま、再びしまい込まれてしまうことがあります。
お客様のお話を伺いながら、こうした写真や記録を未来へつなぐことも、写真に携わる者の大切な役割ではないかと感じました。
写真に残された歴史を、もう一度見えるかたちに
ガラスでできていても、そこに記録されているのは写真です。
取り扱いに十分注意し、適切な方法を探れば、画像を再現できるはずだと考えました。
乾板の厚みや乳剤面の状態を確認しながらスキャニングを行い、PC上で画像を反転、
傷や欠損している部分についても、一点ずつ修整を施しました。
すると、そこには若い女性や、洒落た装いの男性の姿が、驚くほど鮮明に写っていました。
それは、お客様の祖母様が若い頃に撮影された、ご婚約からご成婚前後のお写真でした。
「昔、○○小町と呼ばれていたと聞いていましたが、本当にかわいらしいですね」
それまで見たことのなかった祖母様の若い頃の姿を前に、お客様も大変喜んでくださいました。
長い間見ることのできなかった写真が再び姿を現し、ご家族の記憶へとつながっていく…
そのお手伝いができたことに、写真に携わる者として大きな喜びを感じました。
思い出は、人生を豊かにする
デジタル写真の時代となり、私たちはかつてないほど多くの写真や映像を残すようになりました。
誰もが、カメラとビデオと電話を兼ねた機器を、日常的に持ち歩いています。
記録する方法は変わりましたが、そこに写る人や出来事の大切さは、昔も今も変わりません。
写真や映像を見返すことで、忘れていた出来事を思い出したり、会えなくなった人を身近に感じたりすることがあります。
思い出は、人生を豊かにするものです。
写真、アルバム、ネガ、ガラス乾板、ビデオテープ、カセットテープ…
形や種類が分からなくても、どのように整理すればよいか分からなくても、まずはお持ちください。
これまで培ってきた知識と経験をもとに、思い出を整理し、守り、未来へつなぐためのお手伝いをしてまいります。
京都・中尾写真場
中尾好宏