「撮影」という言葉

商品撮影風景

「写真を撮る」ことを「撮影」と言いますが、どうして「影」なんでしょう?
私の写真屋人生もいよいよ晩年に差し掛かって来て、どうも色々と気になってたことを自分なりに解釈しないと気が済まないカンジになってきました。
人やモノに当たる「光」を記録する技法=photography(写真術)なのに、どうして「撮光(さっこう?)」じゃないんでしょうか?

 「ライティング」=光の扱い方 

写真撮影を行うにあたっては、撮影者や撮影目的により色々なアプローチがあります。
私の場合はまず被写体に当たる光を評価するところから始めるのを基本としてます。

屋外での撮影ですと、「どんな光がそこにあるのか?」をまず観察します。
例えば…

・どの方向から被写体に光が当たるのか?

→ 上から?横から?正面から?

・どんな量の光が当たっているのか?

→ 多い?(明るい?)少ない?(暗い?)

・どんな質の光が当たっているのか?

→ 硬い?(日向?)柔らかい?(日陰?)

・どんな色の光が当たっているのか?

→ 白い?(真昼の日向)赤い?(夕方の日向)青い?(一般的な日陰)

上記のような光の状態を把握し、仕上がりをイメージできてから、光の扱い方法について考えます。

 スタジオライティングは難しくない 

スタジオだと、光の扱いはもう少し簡単…と言うと正確じゃないかもしれませんが、
自分で照明器具を加えたり減らしたり、色を付けたり…ほぼ全てをコントロール出来るという意味では、屋外での作業より簡単だと思ってます。
この光をコントロールする作業を、一般的にはライティングと言います。
写真は、このライティングで半分以上は決まってしまう、大切な作業です。

写真はちょっと乱暴に言えば「光を写す」というのがその原理ですし、光がなければ写真という原理は成り立たないものなんです。
ちょっとお話がそれてますが…
そのライティング( lighting )という言葉、これも「光をどう扱うか?」というところに焦点をあてた言い方ですよね〜。
「影をどう扱うか?( shadowing? )とは決して言いませんし…。

 「モノを見るな、光を見ろ!」 

この言葉は、私が若い頃に先輩写真家の先生方から、何度も何度も聞かされた(命じられた!笑)ものです。
人の目はまず明るいところに視点が行く、それから暗いところへ視点が移動するという習性があると言われていて、写真での表現の世界で「光」をどう捉えるかというところを重点を置くのには、その習性に沿っていることでもあると言えます。

光・ライティング…どれもこれも「光」を主眼に置いた言い方や教え、なんですけど、言葉では撮「像」という言い方はあるものの、撮「光」と言う言葉はなく、一般的に撮「影」と言う…。

 英語で「撮影」と言うと… 

ちなみに、「撮影する」という言葉(動詞)に相当する英語表現をみてみると…

・photograph

→ そのままの表現、まさしく「光で描く」という意味

・take photos(pictures)

→ 撮るという行為をtakeで表現、take は写真用語ではなく便利な動詞

・expose

→ 本来は曝す、暴く、という意味で、写真では「光に曝す(露光)」

・shoot

→ 本来は「撃つ」「射る」「射止める」という意味、photo shooting が「写真撮影」という意味になるかなぁ。

やっぱり、どこにも「影」に相当する意味は含まれていない…。

 ここでの「影」は”shadow”じゃない! 

色々調べてみると…
日本語において、「影」という単語は多義的で、この「撮影」という言葉では “shadow”という意味ではなく、物事の本質や形を捉える象徴として使われています。
「影」という単語、例えば「影響(えいきょう)」という言葉では、「影」は他の物事の形や存在に対して及ぼす力・作用を与える存在ですし、「影が薄い」というフレーズでは、「影」は物事や人の存在感や存在意義を暗示する言葉として使われています。

写真は、モノや人の本質、本当の姿をを捉える技術と考えられていたことから、従来から「本質や本当の形」という意味を含む「影」という単語が採用されたようですねー。

結論としては…

「撮影」
≠ 「影(shadow)を写す」
≒「影(物事の本質・本当の姿)を写す」

「写真」という言葉に引き続き、日本語での命名に込められた先人の捉え方・考え方に、少しばかり触れることが出来ました。

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「写真」という言葉

撮影

撮影(さつえい、英: photographingあるいはshootingあるいはfilming)とは、写真や映画やビデオなどをとる(撮る)こと[1]。カメラ(撮影機)によって写真や映画やビデオなどを撮ることである。

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